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最高裁判所第三小法廷 昭和41年(オ)700号 判決 1968年7月09日

上告人

松岡儀十郎

代理人

石丸友二郎

被上告人

右代表者

赤間文三

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人石丸二郎の上告理由第一点について。

民訴法六四九条一項、六五六条、六五七条の規定は、差押債権者に配当されるべき余剰がなく、したがつて、差押債権者が執行によつて弁済をうけることができないのにもかかわらず、無益な競売がされるとか、また、優先権者がその意に反した時期に、その投資の不十分な回収を強要されるというような不当な結果を避け、ひいては執行機関をして無意味な執行手続から解放させる趣旨のものであるから、差押債権者、優先権者および公益を保護することを趣旨とする規定というべきである。そして、右のような前記法条の趣旨に従い、剰余の見込がないため競売手続が取り消され、その結果債権者(競売目的物件の所有者)が当該不動産の所有権を保持することになり、または差押債権者の債権に先きだつ不動産上の総ての負担および手続の費用を弁済してなお剰余を生ずべき価額以上に該不動産が売却されて右負担等を弁済してこれを免れるというような債務者に利益な事態が起こつても、その利益は、同法条を適用した結果生じた事実上の利益にすぎず、債務者が執行手続に同法条の違反があることを主張して請求できる法律上の利益ないし権利とはいえないと解するのが相当である。したがつて、これが法律上の利益ないし権利のあることを前提として損害賠償を求めることができるとの上告人の論旨は理由がないものといわなければならない。原判決の判断は相当であり、所論の違法はない。論旨は採用できない。

同第二点について。

本件強制執行は上告人に対する関係では違法ではなく、したがつて、上告人は右強制執行が違法なことを理由として被上告人に対し国家賠償法一条一項による損害賠償の請求はできないものと解すべきことは、前説示により明らかである。原判決もこれと同一の判断をし、上告人の請求を棄却したものである。所論は原判決の傍論をとらえて、その法律的見解を非難するものであり、原判決には所論の違法はない。論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(松本正雄 田中二郎 下村三郎 飯村義美)

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